地層のみえる場所にいくと、不思議な心持ちになる。「時間が視えている」からだろうか。それほどまで壮大な物語でなくても、瞬間瞬間、世界は上書きされているのだと思う。「現在」はすぐに過去となり、剥がれて堆積してゆく。しかし薄い皮膜の向こう、過去は透けて確実にそこにある。日々、細胞は入れ替わり、自分が自分でなくなってゆく。なのに今日もまだ、大切なものが、大切なままなのはなぜだろう。
宇宙に比すればあまりにちっぽけな、例え非力なイキモノだとしても、わたしたち一人ひとりもまた一つの層なのだ。それらが重なり、交わり、つながり、広がり、この星の歴史の連鎖を担っている。容易く、儚く、退化し、喪われ、消滅へのベクトルを辿るだけだとしても、忘れても、忘れられても、なお。