「星月夜」と聞いて、星と月が出ている夜空を思い浮かべる人もいるだろう。
しかし本来、星が月のように明るく見える夜のことを指す。
陽が効力を喪い、蒼闇に包まれるからこそ星たちは瞬き、輝く。
月が姿を隠すなら、なお煌めきを増して。単なる明暗の問題ではない。
影の中でしか生まれないもの。深い森を彷徨いながらも紡がれる物語。
死すら糧に代え。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
とはニーチェの言葉だが、人が目を背けたくなるものや自らの暗部と対峙してこそ形づくられるものが、きっとあるだろう。
底知らぬ漆黒に差し伸べた手は、小さく幽かな光を掬い上げる。