2012年から4年に渡り、福島の風景を撮影してきた成瀬友彦。神戸に写真を通じて、阪神・淡路大震災を支援する仲間がいる。ここから福島へと繫がった。「写真に携わる者として、この風景を残さなければ」、その思いだけで毎年でかけている。
ナビゲーションシステムすら止められている中、車を走らせ、小学校やこども園を中心に回った。シャッターを切るタイミングは、一瞬で決まる。「撮らなければならない」原衝動に従うのみ。しかし、足を進めるのも躊躇われる現場、一刻も早くここを去りたいという思いも同時にあった。
供えられた造花の花束。除染ゴミを隠すだけの意味のないパネル。朽ちたランドセル。周囲の状況とは関係なしに美しく咲き乱れる花…。人の気配を失ったまち。避難指示解除準備区域といいながらも、誰かと会うことはまずなかった。見かけるのは、カラスや猪、野良犬くらい。その野良犬すら、飼い犬だったのだろうと思い直す。16時半になると区域から退去するようにと、遠くから放送が流れてきた。
言葉を尽くすことは、もう止めよう。成瀬の切り取った福島は、単なるドキュメンタリーではない。あなたはこれらの作品に触れる時、一体何を感じるだろうか。