小鳥のさえずりの向こう、新聞配達のバイクが通りすぎる。動きはじめた朝、明けていく空、光のボリュームは徐々に増し、カーテン越しに外の気配が、まだたっぷり夜を抱えた部屋に入ってくる。
まどろみの領域へ再び身をおくため、もう1度、目をとじる。そういえば、まぶたもカーテンのようなものだった。
集中して向き合うため、深夜、家がシンと静まり返ってから制作をはじめるのが常だという。身近なもの、例えば、さほど手を入れなくとも季節のうつろいをみせる庭、鮮やかなピンクの花をつけたサボテン、旅先から連れて帰るうちいつの間にか数を増やしたスノードーム、高台の窓から見下ろす緑とまち並み…くらしの中、自身の琴線に触れたものだけを取り出し、作品にする。
ただし「striped curtain」に関していえば 「これ、家にあるカーテンじゃないんです。 こういうのがあればいいな、って」その言葉をきいた途端、心の中、イメージのカーテンが風に揺れた。 日常からふと浮き上がる。ふわり、気持ちも浮力を発動する。頭の中で内と外とがまざり合い、小さな煌めきが画面上にきゅっと凝縮されてゆく。