COVID-19のおかげで、 L galleryでの個展は5年ぶりとなる。2020年の春、フランスは完全ロックダウン(原則住居から1キロ以上の移動禁止)となり、引きこもりを得意とする私のようなアーティストにはいつもより雑念なく集中できるというプラスの面もあった。しかし半年もすれば息切れ。その後、冬になってもカフェすら開いていないという状況が続き、そして2021年デルタ株の第4波では感染率の高いパリおよび近郊は閉鎖されてしまった。
この時期、海外からアーティストが招聘できないという「ある種COVID-19が幸いした」理由で南仏プロヴァンスのアーティスト・レジデンスに呼ばれた。これ幸いと3月~4月田舎の自然を満喫、もちろん新しいテーマで制作も進んだ。
このレジデンスはピカソの恋人として有名なドラ・マール(「泣く女」のモデル)が戦後住んでいた家であった。今展ではそのレジデンスでの制作を中心に、その前後に試みだした新たな作品も紹介する。
またドラ・マールの人生も、ドラ・マールの家の変遷も興味深く話し出すとどんどん広がる「噺」となる。なので今展はトークがメインとも言えるのかもしれない。展示とトークを一体化する試みは、COVID-19で一層輪をかけて広がったヴァーチャルな環境と「やっぱり坂田さんの個展は本人がいないとね」という再三延期されるに至ったL gallery の意向に対しての私なりの答えでもある。