2023年、地中海沿岸に面したヴィラで開催された小さなアートフェスティバルで、海で見た岩や海藻、魚、それに稀にだが現れたタコのいる水中の風景をその海辺の海水を使って描き展示した。おそらく、これがタコシリーズの起源だ。
生物としてのタコはかなり風変わりな存在で、骨がないから狭いところも難なく摺り抜け、環境に合わせて体表面の色も質感も変える。飼育されれば係員を認識して、わざと悪戯をしでかしたりする。特に私が興味を持ったのは、タコの神経系は脳から全身を制御する一局集中型のシステムでなく、沢山のニューロンが足にもあり8本の足がそれぞれ独立して外界を知覚し行動を決めるという、我々にとっては想像もつかない全く不思議なシステムを持っていることだった。いったいタコは、どんなふうに世界を見ているのだろう? 見るといえば、タコは右眼と左眼が連動していないらしい。
今回展示する、自分のこれまでの異なる作品を脈略もなく、くっつけあわせた「タコラージュ」これもタコ的世界観を目指す、ごく小さなアプローチだ。
また、「キミはタコを見たか?」とのメッセージを入れた私のインスタグラムのストーリーは、最初は単に個展のためのブレインストーミングだったのだが、いまでは自分の過去の視点や決まりから離れ、異質のもの、相違した視点を並立させ、新たなものの探究へと誘うための一種のマントラになりつつある。



